1995|アメリカ「 終着地ホノルル 」
【 ホノルル 】

この旅の最終地点は、ハワイのオアフ島でした。

ホノルル国際空港は、これまで降り立った近代的な空港と比べると、アースカラーの何の変哲もない四角い建物です。その建物を取り囲むようにソテツの木々が植えられているのが、なんとも南国らしい雰囲気でした。

買い付けでパンパンになったダッフルバッグを何個もカートに積み上げて、レンタカー乗り場まで運びます。

その後、車に乗ってワイキキ近くまで移動しました。

ハワイでの宿泊先は、ワイキキの目抜き通りから一本裏に入ったビルの中にあるコンドミニアムです。

部屋に入ると、海外ドラマや映画でよく見かける家庭の室内を、そのままコンパクトにしたような仕様になっています。

さっそく室内に荷物を置くと、「昼飯でも食べに行こうか?」

ということで、出掛けることになりました。

 

【 衝撃のフォー 】

ランチは、社長が最近気に入っているというフォーのお店に行きました。

ここはハレ・ベトナムというお店で、ワイキキから車で10分くらいのところにあります。

ランチタイムも少し過ぎていましたが、店内では数組のお客さんがフォーを食べています。

わたしは、日本でフォーを食べた記憶がありませんでしたから、社長と同じものをオーダーしました。

しばらくしてテーブルに置かれたのは、もやしと香草、そして、たっぷりの肉とタマネギが乗ったアメリカンサイズのどんぶりです。別皿には追加でトッピング出来るシャキシャキもやしと香草も付いてきます。

茶色いスープをひと口飲むと、見た目のあっさりした感じとは違って、しっかりパンチのある味で、一気に心を鷲掴みにされてしまいました。

ツルツルした中にわずかな弾力を感じる麺と一緒に食べる、シャキシャキしたもやしの食感がたまりません。旨みの詰まった肉と、香草の爽やかな感じも素晴らしく、全体のバランスがとても良く感じます。本能のまま食べ進めていたら、たくさんあったどんぶりの中の麺や具材は、あっという間になくなってしまいました。

次はいつ来られるか分からないので、最後はスープを確認しながら、ゆっくり味わいます。

フォーとは、こんなに美味しい食べ物だったのか!

この衝撃が忘れられず、日本に帰ってからも時々フォーを食べました。しかし、日本であのときの感動に出会うことは、いまだにありません。

ところが、その後にアメリカで食べたフォーは、どれも同じくらいのレベルなんですよね。肉の種類なのか、パクチーのワイルドさなのか、それとも、その土地の気候なのか。

いまだに答えが出ないままです。

 

【 ワイキキビーチ 】

ここの詳細は定かではないのですが、昼食を食べた後、わたしはワイキキビーチに来ていました。

社長は基本的に海に入らない人なので、確かコンドミニアムのプールに入ったり、部屋に戻って日本から持って来たDVDを観ていたのだと思います。

わたしは、たくさんの観光客に混じって、あの有名なワイキキビーチに立っていました。

ビーチの先には、絵に描いたようなダイヤモンドヘッドが聳え立っています。

わたしがいる辺りから空港のある方向を望むと、ホテル群が建ち並んでいます。

ホテルの手前にあるビーチは人がたくさんいたので、わたしはデューク・カハナモク像がある場所から、少し水族館寄りの、比較的人の少ないビーチから海に入りました。

遠浅の海は、何もしないでプカプカ浮かんでいるには最高です。

近くではサーフィンのレンタルがあり、たくさんの人がサーフィンをしています。

慌ただしい長い旅も終わりが近づき、海に入りながら、ホッとするひとときでした。

ふと、英語も少しだけ意味が理解できるようになってきた頃に帰ってしまうのは、もったいない気もしてきました。

でも、一方で自由に会話ができない環境にも疲れていました。

同時に、東京にいる会社の人や、友人が恋しくなりました。

せっかく観光地のビーチにいるのに、ひとりぼっちというのも、なんだか虚しいものです。

急にそんなことを考えると、コンドミニアムの部屋まで戻ることにしました。

 

【 ワイキキ散歩とTUMI 】

部屋で着替えてから、ワイキキの街をプラプラすることにしました。

ワイキキには、至るところにABCストアという、コンビニとお土産屋が合体したようなお店があります。

高校生の頃、アメ横でハードロックカフェのTシャツと並んでよく見かけた、あの企業Tシャツのお店です。

ホットスナックコーナーには、ハワイ名物のスパムおにぎりも売っています。

たいしてお腹が空いていたわけでもありませんが、ハワイに来て食べない理由はありません。

まぁ、味に関しては予想通りでしたが、その後も本場の味をついつい確かめたくなるようなものでした。

ただ、ひとつが大きいので、夕食を前にしてお腹がいっぱいになってしまいました。

その後も、各ホテルの中や敷地内の小道などを歩いてみました。

小さなお店がたくさんありましたが、特に何か欲しいと思う店はありません。

ただ、街全体がテーマパークの中のようで、歩いているだけでもなかなか楽しいものです。

そんな感じでワイキキを歩いていると、街の真ん中に大きな免税店がありました。

ここは日本人観光客の定番ルートのひとつで、ハワイ土産や、日本では買えないブランド品などが売っていて、ほとんどの人が立ち寄るようなところです。

わたし自身、有名ブランドにはあまり興味がありませんでしたが、TUMIのラインナップが豊富で、気になっていました。

確か、TUMIが日本に上陸する前だったと思います。

当時は、バリスティックナイロンの強度が注目されていて、その素材とレザーのコンビで仕上げられたタフなビジネスバッグが、セレクトショップの人たちに人気でした。

海外でしか入手できないこともあったので、知る人ぞ知るブランドです。

そのほとんどがビジネスバッグやスーツケースでしたが、この免税店では、そのほかにもいろいろなアイテムが置いてありました。

その中には、同僚が持っていた財布もありました。レザーと、バッグに使われているものよりも目の細かなナイロン生地を組み合わせたもので、TUMIの特徴がコンパクトに詰め込まれた、欲しくなる一品です。

わたしもTUMIの何かを買っておきたくて、TUMIらしからぬ、カラフルなバリスティックナイロン地のトートバッグを買いました。

その後もこのナイロントートはお気に入りで、何年も使っていたのを覚えています。

もちろん、財布も数年後に買って、何年も使っていました。

でも、それはもう少し先の話です。

 

【 マイタイバー 】

その夜は何を食べたか忘れてしまいましたが、食後に社長とワイキキの街を散歩していると、「せっかくだから、いいバーに連れて行ってあげよう」

と言って、奥まった場所にひっそりと建つピンク色のホテルに入って行きました。

ホテルのロビーを抜けると、落ち着いた感じの中庭にテーブルや椅子が置かれていて、そこがバーになっています。

このホテルが、かつての高級ホテル「ロイヤルハワイアン」で、その中庭にあるのが有名な「マイタイバー」です。

マイタイと言えば、80年代の雑誌やバブル期の飲み物として、頻繁に紹介されていたお洒落なカクテルです。

その発祥の地が、このマイタイバーでした。

最初の一杯は、名物のマイタイを頼みました。

大人びた味で、一杯飲んだらもういいかなぁ、という感じです。

そのため、2杯目は周りでもたくさんの人が飲んでいたチチというカクテルを頼みました。

これはココナッツのミルキーな味わいがベースになった、飲みやすいカクテルでした。

その後もマイタイバーには何度も足を運びましたが、これ以降、チチばかり飲んでいます。

ちょうどいい感じにほろ酔いになって、社長とふたりでコンドミニアムまで戻ります。

部屋に戻ると、社長は、「残りのドラマを一気見するぞ」と、夜遅くまでDVDの続きを見ていました。

旅慣れると、海外を堪能することはなくなるのだろうな?

そんなことを考えつつ、わたしは眠りにつくのでした。

いよいよ、アメリカ買い付けの旅もあと1日です。

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