1995|アメリカ「 NY圏の街並み 」
ニューアークの街並み 】

初日はホテル近くのニューアークの商店街から買い付けが始まりました。

馬に乗った警官が巡回する街並みは、まるで映画のセットのようです。

まずは町のスポーツ用品店を数軒回り、日本で売れそうな商品を探していきます。

初めて見る商品は、どれも日本へ持ち帰れば売れそうに見えました。わたしは興奮しっぱなしでしたが、社長はこんなモノいくらでもあるよって感じで、完全にスルーです。

ニュージャージー側のホランドトンネルの手前には巨大なショッピングモールがあって、次はモール内にあるスニーカーのチェーン店を数件まわりました。

ここには、日本のラインナップと違い、ハイテクのバスケットシューズばかり並んでいます。意外にも日本で売れそうなスニーカーはほとんど売っていません。

奥の方に陳列されたローテクスニーカーも、日本では見かけないカラーリングばかりで、国により好みの違いを感じました。

「日本のバイヤーは、どこで買い付けしているんだろう…」そんな疑問を持ちながら、このモールを後にしました。

 

【 素通りのマンハッタン 】

ホランドトンネルを抜けると、そこは映画でも馴染みのあるマンハッタン島です。

カナルストリートでは観光客や地元の人、スーツを着たサラリーマンなど、沢山の人が忙しそうに行き交い、活気に満ちています。

また、昼時だったこともあり、チャイナタウンで買ったであろう透明なカップに入ったヌードルを持って歩いている人が何人もいましたが、麺の中身が丸見えなのは、あまり美味しそうじゃないなぁと思いました。

社長は「帰りにまた寄るから」と言って、マンハッタン島を後にし、次の目的地、クイーンズへと向かいました。

 

【 レザーのオールスター 】

クイーンズの商店街には、目当てのスポーツ店があるそうで、社長はそこを目指していました。ここは韓国人が経営する個人商店で、調子の良いローテクスニーカーが見つかるので、ちょいちょい立ち寄ると言っていました。

店の道向かいの路地に駐車して、お店に入ります。

店内は昭和の商店街にありそうなスポーツ用品店といった雰囲気で、たくさんのスニーカーが並んでいます。ラインナップは先ほど立ち寄ったチェーン店とは全く違います。

その中に、オールレザーのコンバース・オールスターがポツリと陳列していました。しかもセール価格です。

これは当時の日本で見かけないモデルです。早速、この珍しいスニーカーを各サイズを数足ずつ買うことに決めました。買い占めなかったのは、まだ流行っていたわけでも無いし、次に来ても残っている可能性が高いと踏んだからです。

わたしは、ここで売っていたNIKEのスニーカーを買いました。側面がメッシュになった白いエアフォースワンで、値段は30数ドル。当時の日本でも破格の安さでした。

見た目は明らかにビンテージスニーカーのように若干日焼けしています。しかも、これはわたしのシンデレラサイズです。

こんなスニーカーが売れ残っているということは、この店には近しいジャンルの日本人バイヤーが、あまり立ち寄っていなかったのでしょう。

買い物を済ませると、社長は「車を店の前まで、回して来るから、店の前に着いたらすぐに商品を詰め込んでくれ」と言いいました。

店から車までは、ほんの数十メートルです。

社長は以前、この店で同じように買い付けをした際に、「危ないから車を回して来い」と店主に言われたそうです。

「そんなにアメリカは危険なのか?」
「やばい所に来てしまったなぁ……」

そんなことばかり考えていました。

しかし、次に向かうのは……

数年前まで、危険過ぎる街として知られた、サウスブロンクスです。

 

【 サウスブロンクス 】

クイーンズからハイウェイを使って少し北上すると、次の目的地サウスブロンクスはありました。

ふたつの街に比べて、ここは道が広い印象です。

公園では、昼間からバスケットをプレーする大人がいたり、何をしているのかわからないけれどブラブラ歩いている人が多い印象です。

先入観もあってか、その光景を見て緊張感が走ります。

すると、社長が車を一旦止めてわたしに話しかけます。

「道路の向こうにスニーカー屋が見えるだろ、あそこに行って、良さそうなスニーカーがあったら合図して

そうしたら車を駐車させて、そっちに向かうから……」と言いました。

うわぁ〜、単独行動したくないなぁ〜

海外二日目で、いきなり単独行動です。

正直、かなり厳しい試練だと思いました。

でも、他の選択肢はありません。

わたしは何十メートルもある道路を横断し、そのスニーカー屋に入りました。

広い店内には、大音量でヒップホップが流れています。

店内には坊主頭に近い髪型の男性ばかりがいました。

そんな中、セミロングでファーマーのような格好をしたアジア人は、どう見てもわたし一人です。

場違いなのは自分でもよく分かりました。

わたしは、少しでも場に溶け込もうと、音楽に乗っているかのような素振りをしながら、スニーカーを見てまわります。

スニーカーコーナーには、日本ならバスケットボールやアメフトをやっていそうな、背が高くガタイの良い人ばかりでした。

それに比べて、わたしはもやしのように細っこく感じます。

結果、チェーン店と似たような商品構成で、買い付けに使えそうなスニーカーはありませんでした。

社長に報告しなきゃと、店を出ようとした矢先、背後から「なんかあった?」と声がしました。近くに駐車して、店に来てくれたのです。

ここで置き去りにされたらお終いだ……と、ドキドキしていたので、この旅いちホッとしました。

こうしてニューヨーク州を離れ、わたしたちの買い付けの旅は、さらに東海岸を北へと向かっていきます。

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