1984-1987|品川「中学生、カオスの私服からIVYまで」
【 私服のレベル 】

わたしが中学生だった1980年代中盤は、DCブランドが盛り上がっていた頃です。

シックなデザイナーズブランドから、カラフルなキャラクターブランドまで、当時はひとまとめに「DCブランド」と呼ばれていました。

ただ、中学生になったばかりのわたしには、そんな違いなど全く分かりません。

つい先日までスポーツファッションに浸かり切っていた小学生が、中1になって、先のブログでも触れたヤンキー美学を少し注入された程度です。

私服のセンスなど、あったものではありません。

そんなわたしが、少しずつオシャレを意識するようになっていきます。

今回は、そんな頃の話です。

 

【 最初にカッコいいと思ったもの 】

最初のきっかけは、中1の夏でした。

普段は制服姿しか見ることのない先輩たちが、グルカショーツにタンクトップという格好をしていました。

正直、小学生の頃から知っている先輩たちが、知らぬ間に、こんな大人びたオシャレをしていることが衝撃でした。

もちろん、グルカが何なのかなんて知りません。

当時、グルカショーツと呼ばれていたのは、タックが何本も入った裾の広めのシルエットで、ショーツと共生地の持ち出しが左右の脇でベルトのようになっているものでした。

そこに大きめのメッシュ素材や綿のタンクトップを重ね、レザーの編みサンダルを合わせています。

後になって、このサンダルがグルカサンダルと呼ばれていることを知りました。

どうやら、ちゃんと当時の流れに沿ったスタイルだったようですね。

ただ、先輩たちは、そこに蛍光色の服や小物などを合わせて、謎にインパクトを与えています。

これは当時のサーフファッションの流れだったのでしょうか。

でも、その全部がなんだかカッコ良く映りました。

とにかく、大人っぽくなった先輩に近づきたい……

そんな気持ちになりました。

こうして、小学生マインドだったわたしは、よく分からないままオシャレに目覚めはじめるのです。

 

【 テレビと地元から入ってくる流行 】

中学一年生の冬、「毎度お騒がせします」というドラマが始まりました。

このドラマで見かける、可愛い系のIVYスタイルは(まだIVYなんて言葉は知りませんでしたが…)友人の間でも流行っていました。

当時、4つ上の姉が「パーソンズっていうブランドが人気だ」と言っていたので、その流れもあったのかもしれません。

また、友人が京浜蒲田の洋服屋で買った服が、ある時、このドラマで使われていました。

今では、テレビで見る服にはスタイリストが付いて、気の利いたブランドのものが使われることが多いですが、当時はまだ、こういう庶民的なリアルさも残っていたのでしょう。

また、中学2年になると、「夕やけニャンニャン」というバラエティ番組が始まりました。

当時大人気だったおニャン子クラブが着ていた「セーラーズ」というブランドも、巷で大人気でした。

地元の先輩がセーラーズの傘(洋服じゃあないです)を買ったと聞いて、ある時、その傘を見せてもらいました。

友人とそれを見ながら、「本物はやっぱり作りがしっかりしてるなぁ」

などと言って、崇めていました。

東京と言えど、わたしの地元はそんな感じです。

学校生活や部活がほとんどの毎日で、ファッションについて掘り下げるなんて、この程度のものでした。

 

【 パステルカラーに魅せられて】

テレビや地元から流れてくるものを見ているうちに、わたし自身もいろいろな服に手を出すようになりました。

セーラーズの流れだと思いますが、パステルカラーのブームもそのひとつです。

可愛いカラーとヤンキーテイストは、案外、親和性がありますからね。

これは現在でも、そんなに変わらない気がします。

わたしはペパーミントグリーンやピンクの、ダブっとした服を買いました。

また、エイのようなシルエットのドルマンスリーブのカットソーやシャツにも手を出しました。シャツは先輩からもらったものです。

いま思えば、この頃がわたしの中では一番やらかしていた時代かもしれません。

その一方で、洋服ひとつで全く違う自分になれる気がして、心からワクワクしていた時期でもありました。

 

【 アバンギャルド 】

夏の反動なのか、冬になると、今度はシックで暗い色目のデザイナーズブランドのような洋服が気になり始めます。

まぁ、行きつけの洋服屋でも、派手な色目から一転、ダークな服ばかり並ぶようになっていましたからね。

黒いタートルネックや暗めのストライプのシャツ、千鳥格子のジャケットに、ヘリンボーンのコート。それをダブっとしたパンツに合わせます。

安全地帯の相当な下位互換ではありましたが、自分なりの大人っぽい格好として、少しずつ統一感のようなものも出てきました。

当時のわたしは、テレビ番組や地元の流れの中で、フラッシュカードのように興味が移ろっていました。

「いいな」と思うたびに、食指を伸ばしていました。

後先なんて考えていません。

もちろん、一貫性もありません。

ヤバい時代です。

とはいえ、部活に明け暮れている中学生に、私服を着る機会なんて、たまの休みか、近所の祭りの夜くらいです。

だから、一貫性がなくてもトータルコーディネートがひとつあれば良かったんですね。

 

【 姉が持って帰ってきた雑誌 】

そんな中学2年生の頃、7つ年上の姉は、とある有名コピーライターの事務所でお茶汲みのバイトをしていました。

姉は時々、わたしのために、捨てる予定の雑誌を何冊か持って帰ってきてくれました。

それは、何ヶ月も前の「メンズクラブ」でした。

これが、わたしが手にした初めてのファッション雑誌です。

最初は、誌面のモデルが大人過ぎて、あまり読む気がしませんでした。

ところが、突然この雑誌にあるIVYの文脈が見えたとき、面白く感じる瞬間がありました。

それ以降、わたしは雑誌を穴が空くほど読みました。

しかし、掲載されている服は、どれも高くて手が出ません。

それでも、そこに載っている洋服や着こなしには、わたしの心を突き動かす何かがありました。

それまでのわたしは、テレビや先輩、友人たちが身につけているものを見て、「いいな」と思ったら、そのまま真似していました。

でも、「メンズクラブ」を読むようになってからは、たったひとつのアイテムや着こなし、その背景まで気になり始めました。

何十年も経った今でも、なぜかこのIVYスタイルばかり気になっているのは不思議なものです。

ただ、この時のわたしは、そんなことになるとは知る由もありませんでした。

オシャレの門を、叩いたばかりだったのです。

 

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