
【 ロサンゼルス 】
いよいよ、買い付けも後半戦となりました。
わたしたちは国内線で、LAX(ロサンゼルス国際空港)に降り立ちます。
空港から一歩足を踏み出せば、光源に飛び込んだような、反射的に目を細めてしまう明るさです。
普段のわたしは、あまりサングラスをすることがありませんが、この日差しだと、サングラスをしている人が多いのも納得します。
また、気温も東海岸よりずっと暖かく、半袖短パンで過ごしたいほどでした。
車はロサンゼルスの街中をスルーして、そのままバーストゥのアウトレットを目指します。
そこは、ロサンゼルスからラスベガスへ向かう途中にあって、空港からは車でおよそ3時間のロングドライブです。
空港近くの街中は、日本の高速道路が巨大化したような、空中をグネグネと入り組んだコンクリートだらけの道路でした。
しかし、街中から離れるにつれ、徐々に建物も減っていきました。そして、ひと山越えたあたりから、突然、景色が変わりました。
周囲にはベージュ色の岩肌が広がり、西部劇に出てくる荒野のような景色になっていきます。
【 バーストゥ 】
荒野のハイウェイを、しばらく車で走らせます。
最初は、見たこともない景色にウキウキしていました。しかし、さすがに1時間以上も景色が変わらないと、いつ着くんだろうって、だんだん退屈になってきます。
2時間近く走っていたでしょうか。
突然、巨大な看板とともに、荒野の真ん中に街らしきものが現れて、右手にはたくさんの建物が見えてきました。
ここが、バーストゥのオールドタウンとアウトレットです。
広大な土地ということもあって、さまざまなお店が連なる大きなアウトレットでした。
早速、ラルフローレンのアウトレットへ向かっていると、見覚えのある長髪で、スラリと背の高い男性が歩いていました。
彼は、ラルフローレンをメインに展開している有名セレクトショップで働く、わたしの親友です。
こんな荒野のど真ん中で会えるなんて、嬉しくてたまりませんでした。
一瞬、「おー」と、お互い嬉しそうに目を合わせます。
しかし、どちらも社長とふたりで来ていたこともあって、立ち話をするような雰囲気でもありません。
わたしと彼は、一言二言挨拶を交わしただけで、そのまま別れることになりました。
こんな偶然も、買い付けに慣れた彼らにとっては、それほど特別なことではなかったのかもしれません。
でも、アメリカに来たばかりのわたしにとっては、なんとも嬉しい再会でした。
【 自分の買い物 】
ここ、バーストゥのラルフローレンのアウトレットは、総合体育館のような広い場所でした。
そして、東海岸では見なかったような一点モノが、ザクザクあります。
ただ、どの商品にもタグには、金色のマジックでアウトレット商品だと分かるような印が入っていました。
それだけは少し気掛かりでしたが、珍しく、ビッグシリーズの半袖シャツなどもあります。
買い付け商品をピックアップしながら、自分用にも欲しい商品が出てきます。
ボーダーの半袖Tシャツを数枚と、師匠も着ていて、自分も欲しいと思っていたコットンニットの長袖フットボールTシャツです。
しかも、わたしサイズがバッチリ揃っており、全部買っても、5,000円くらいです。
東海岸で我慢した甲斐あって、自分の買い物はなんて楽しいのでしょう。
しかし、一度買い出すと、他にも何か欲しくなってきます。
そう、ここを出たら、次に狙っていたアレを買いに行こうと思いました。
【 イエローヌバック 】
それは、ティンバーランドの定番、イエローヌバックのワークブーツです。
90年代のヒップホップ界隈ではお馴染みのアイテムですが、アメリカでは普通の作業靴としても、当たり前に履かれているブーツです。
どちらかと言うと、わたしは雨用の作業靴として、前々から買いたいと思っていました。
また、少し前に友人から聞いた、フランスのサーファーにも人気があるという噂も、なんだか惹かれる触れ込みです。
そんなイエローヌバックのブーツが、80ドルでお釣りがくる値段で売っています。
もう、買わない理由はありません。
わたしは社長に、鼻息荒くプレゼンをします。
しかし、重たいという理由から、店用に買い付けしてくれたのは二足だけでした。
今思えば、目新しいものでもありません。買ってくれただけでも、有り難い話です。
その後、ナイキのアウトレットにも立ち寄ります。
ここも、土地が広いだけあって大きなアウトレットでした。しかし、スニーカー市場は競争率の高いレッドオーシャンです。
たくさんの安くなったスニーカーが並んでいるものの、自分用に買っても良いかなというレベルで、お店に並べるほどパンチの効いたものはありませんでした。
結局、ナイキでは何も買わずに、バーストーを後にします。
このアウトレットは、ロサンゼルスからもラスベガスからも、2時間近く車を走らせる必要があります。
途中には、立ち寄るような町などありませんから、その後の買い付けで、わたしがバーストゥを訪れることはありませんでした。
でも、アウトレットという言葉を聞くと、今でもふと、またバーストゥに行ってみたいなぁって思う……そんな場所でした。
【 国旗ブーム 】
再び荒野のハイウェイを車で走らせ、ロサンゼルスに戻って来ました。
中途半端な時間に街中へ戻って来てしまったので、「モールでも寄ってみようか?」との話になりました。
この時は、まだロサンゼルスの土地勘など全く無かったので、どこのモールに入ったのかまでは覚えていません。
ただ、とても大きなモールだったことは覚えています。
このモールにはラルフローレンの店舗も入っていて、アウトレットとは全く違うレイアウトになっていました。
当時の正規店ではアメリカ国旗のシリーズを推していたようで、店内の至るところに国旗をモチーフにした服が並べられていました。
また、少し離れたところにはアバクロンビー&フィッチの店もありました。
まだ、ハンティングメーカーの匂いが残ったアパレルブランドだった時期です。
ここでは、さらにたくさんのアメリカ国旗モチーフを大々的に打ち出していました。
胸にデカデカと国旗が織り込まれたニットが積み上がり、マネキンもアメリカ国旗を着た人ばかりでした。
もともと、わたしの中でアメリカ国旗モチーフのイメージがあったトミー ヒルフィガーも、同じようにガンガン打ち出していましたから、当時はちょっとしたブームになっていたのでしょう。
いまだと、「あれには何か政治的な背景でもあったのかなぁ」と考えてしまいます。
ただ当時のわたしには、有名なファッションブランドが、ここまで全面に自国の国旗を打ち出していること自体が、なかなか面白い光景に映りました。
【 ヤオハン 】
アメリカに行く前から、ロサンゼルスにヤオハンという日本向けのスーパーがあり、そこで買い出しをするという話を、現地にいる人やバイヤーの人たちがしているのを聞いていました。
そこへ絶対に行きたいと思っていたわけではありませんが、一体どんなところなんだろう……と、気になっていました。
そんな話題がのぼると、「近いから、ちょっと寄ってみる?」ということになって、ヤオハンに立ち寄りました。
入り口には、屋台で惣菜などを売っている店もあり、日系の人たちで賑わっています。
蛍光灯の薄暗い店内には、たくさんの野菜や果物が並び、奥には肉や乾物なども置かれていました。
一見、日本のスーパーと変わりはありません。
しかし、サイズや形がちょっと違う、謎の野菜や果物があったり、日本で見かけるものも英語表記だったりします。
まるで、パラレルワールドに入り込んでしまったような、不思議な感覚です。
いまでこそ、アジア系食材のスーパーが日本の至るところにありますが、当時のわたしにとっては、こんな雰囲気のお店ははじめてでした。
ヤオハンの話題が日本で話される理由も、なんとなくわかりました。
このあとは、ちょっと早い夕食を日本食居酒屋で取ろうという話になっていて、ちょうど良い時間になりました。
こうして、長いカリフォルニアでの初日も終わりに近づきました。

